有栖川宮通り
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アロマ―ナモネ氏、これを見てください。編集長が去年5月1日通りすがりに写した写真です。
ナモネ氏―これは、どこかで見たような外観だが…
アロマ―二ツ井の米代トラック本社。
ナモネ氏―駅からきみまち阪に行く通りだな。昔の国道7号線だ。
半分半分放送局長―米代トラックと聞いて、反射的に想い出すのは、何か？シャンハイ帰りのジャーナリスト石田博英が1946年終戦後初の総選挙に立候補したとき、米代トラックに乗って選挙運動したことだ。
ナモネ氏―高橋家の次男坊、能代の〈愚連隊〉がハンドルを握って、な。〈愚連隊〉は、それから秋北バスの運転手だ。
編集長―前にその話をしたけど、米代トラックの会社には関心がなかった。しかし、去年きみまち阪に歩いてゆく途中、会社のファサード、正面を何となく見た。それに視線が行ったのはなぜか、分からない。ファサードは外壁に埋もれた大きな盾のフォルムで、御大典記念の大館町公会堂のファサードに似ていた。
放送局長―確かによく似てる。
ナモネ氏―日本では盾は砦の盾つまり大館の館(たて)に変化した、というのが通説だ。
特派員―昭和天皇の即位記念に建設する公会堂にそういう盾をアレンジした理由は、何ですか、ね？
編集長―大館だから、大きい盾というメッセージを表現したんだろう。天皇に対して失礼なデザインだったら、中止命令が出たはずだ。
ナモネ氏―その大きい盾のデザインは天皇を守る盾として見なければならない。近衛兵のような軍隊が最強の盾だ。
放送局長―盾のデザインは何でもいいのか？戦後、1950年に大館市が制定した市のシンボル・マークはヨーロッパの中世の盾を流用していた。それを自慢した大学生がいた。
編集長―公会堂の大きな盾に似たデザインは、どこかで見たことがあるけれど、ね。理由が分かれば、言うことはない。
アロマ―サーチしたら、大阪市の文化財にあった。埴輪の盾。上がこういうアーク(arc)型。
放送局長―日本の盾か？
編集長―どうかな？でも、アロマがアーク型と言ったのはおもしろいな。アーチ(arch)型と言ってもいい。
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放送局長―1953年、米代トラックの大きい盾はそのころあったのか？風呂屋町大火のあと公会堂が解体されて、跡地にコンクリート造りの最初の大館市庁舎が建てられたとき。
編集長―あったと思うね。大館と二ツ井はミラー・イメージのような関係だ。
特派員―二つのドームがいい例ですよ。大館市庁舎のらせん階段の真上にあるドームはきみまち阪の二ツ井町歴史資料館のドームにつながる。
編集長―意図的な構図だな。2月、米代トラックについて母に聞いたら、思いがけないことが分かった。あそこは営林署の木材運搬などを請け負っていた会社で、社長は藤里町の人で、妹が高橋家の長男正一の嫁になった、ということだ。満州から一度内地に帰ったときに。
ナモネ氏―嫁さんはそれから小繋の外に出なかったという話だよ。
編集長―妹の珠美の迷解説によれば、橋という漢字には天がある。きみまち阪の断崖に架かる小さな橋を見れば、自然にそう思うね。
ナモネ氏―高いところにある橋だ。
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